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新規事業が失敗しやすい2つの理由

近年、新規事業に手を伸ばす企業が増えている。「新たな分野でチャレンジしたい」「業界での競争が激しくなり仕方なく……」など理由は様々だが、それはさておき、新規事業に関しては昔からよく耳にする経験則が2つある。

①今ある事業の延長もしくは応用で勝負しよう
②今あるリソースを活用しよう

既存の事業を発展させる、もしくは応用が利く異なる領域で、これまで蓄積した技術・ノウハウ・人材を使って勝負しようという発想だ。例えば、写真フィルムの技術を応用して化粧品事業で成功した「富士フィルム」、アミノ酸技術を用いて医薬品に進出した「味の素」などは①の代表例であり、工場の遊休ラインを植物工場に転換させた「オリンパス」、過剰な重機と人材で農業を始める土建業なども増えているが、これらは②に該当する。

リスクを抑えつつチャンスを広げる安全策でありながら、自社のメリットを発揮できる合理性も兼ね備えており、この2つの経験則が長いこと語り継がれてきた理由は納得できる。

今や世界的なアパレル企業に成長した「ユニクロ」。革新的な経営で有名だが、そんなユニクロもかつて新規事業に積極的な時代があった。ただし、選んだのはまさかの農業。永田農法という特殊な栽培法、銀座松屋という一等地の野菜売り場など異例づくめの戦略は話題を集めたもののさすがに〝畑違い〟だったため、わずか1年半ほどで撤退した。

こうしてみると、やはり「今ある事業&リソースの活用」こそ必勝パターンのように思われるが、しかし、そこばかりに注目するとコトの本質を見誤る。

富士フィルムしかり味の素しかり、そもそも新規事業を手がけるのは圧倒的に大企業に多い。そこには技術やノウハウ、豊富な人材、潤沢な資金が備わっている。つまり、元から新規事業を起こしやすい環境にあったわけで、あらゆる企業が「新規事業を始めるなら今ある事業&リソースで勝負しよう」と考えるのは危険と言わざるを得ない。そもそも日本企業の99%は中小企業なのだから。

では、この経験則に代わるもの、新規事業を成功に導くコツはあるのだろうかと考えると、次のようなものが思い浮かぶ。

①新規事業の定義を決める
②新規事業に合わせた組織をつくる

じつに当たり前のことだが、これが意外なくらいにできていない。

ウチの会社、また新規事業はじめるんだってよ

「御社にとっての新規事業とは何ですか?」
大企業でもベンチャー企業でも、新規事業の相談の際に真っ先に尋ねるのは上のような質問である。おかしな話だが、どのような事業を始めようとしているのか、その中身について最初の段階ではまったく尋ねない。というのも「新規事業」は多様なニュアンスを含む不思議な言葉で、企業によっても、また同じ部署や人によっても〝受け止め方〟は大きく異なるためだ。新規事業というニュアンスには大きく2つの解釈があるようだ。

①新規事業=新しく事業を興すこと
多方面からのリサーチ、入念なテストマーケティング、精度の高い事業計画などを元に着実に実行するビジネス。簡単にいえば、別会社を目指すくらいの本格タイプ。

②新規事業=社内プロジェクトの延長
「〇〇は案外いけそうかもしれない」といった思いつきにより、社内から人を寄せ集めて部署をつくり、とりあえず始めるビジネス。ちょっと大きなプロジェクトというお手軽タイプ。

「本格タイプ」と「お手軽タイプ」。どちらが正解でどちらが間違いという話ではなく、もし〝新規事業〟という名称を使うのであれば、事前に社内メンバーでしっかり意識統一をしておく必要があるということだ。ある者は分社化するつもりで懸命に動き、ある者は失敗したらまた別の部署に移ればいいやといった温度差があっては、うまくいく事業もうまくいかなくなってしまう。
「自分の会社にとっての新規事業とは何か?」「新規事業をどのレベルまで育てるのか」――。新規事業の定義なり解釈なりを最初に明確にしておかないと、スタートもゴールもなくどんな姿になるのかも分からない、徒労の多いビジネスになってしまう。

いろんな企業の新規事業の進め方を見ていると、程度の差こそあれ②に近いパターンが目立ち、特に中小企業ではお手軽な傾向が強い。つまり、やってみてダメだったらさっさと撤収し、次の事業にチャレンジという発想だ。とにかく鉄砲を打つ――。経営判断としては正しいのかもしれないが、あまりに度が過ぎるとイメージ悪化を引き起こす。

とりわけIT企業やベンチャー企業において、新サービスを立ち上げたと思ったらあっさりサービスを終了させるケースが近年頻発しているのが気にかかる。社内レベルでの〝頓挫〟ならまだしも、ある程度の利用者がいて社会的にも認知されていた場合、利用者や社会に対して少なからずの不便や迷惑を強いるわけだから、看板を下ろすにしてもそのあたりの影響をよくよく考慮すべきところだろう。

同時に忘れてはならないのは、失敗した新規事業に携わった社員の心情や立場だ。それなりの挫折感を味わうだろうし、それによって社内での立場が悪くなる恐れもあり、社員によっては「勝手によく分からないプロジェクトに放り込まれ、勝手に失敗して、まったくいい迷惑だ」となるかもしれない。そんな失敗を繰り返さないためにも、最初に新規事業の定義をしっかり決めること、そして社員や関係者で共有することは欠かせない。

小さくても組織、小さいからこそ組織

新規事業とは、読んで字のごとく新たに事業を始めることだ。参入する業界によってはビジネスモデルすらないこともあり、このため「事業の個性をいかに出すか」「マーケットはどのくらいの規模か」「ターゲットはどこに設定しよう」など、とかく〝事業づくり〟に目が向きがちだが、じつはこれが躓きの原因となる。

事業を遂行するのはあくまで「人」である。言うまでもなく「組織」の良し悪しが事業の成否を決めるわけで、この原則は新規事業だろうと今ある会社だろうと変わらない。
新規事業を始めよう――。そう思いついた瞬間、すぐに手を付けなければならないのは、じつは事業づくりでなく「組織づくり」の方にある。この点を疎かにしたまま新規事業を進めている企業が後を絶たないのは、上で述べた「新規事業の定義を定めていない」ことと大きく関係している。

事業のカタチが見えていないから、組織のカタチもない。

取り急ぎメンバーを揃えてみたものの、マーケットを開拓することに気を取られた結果、営業ばかりで企画や財務担当者がいなかったり、リーダーが何名もいて命令系統が複雑だったり、そもそもその分野のスペシャリストがいないことも。新規事業というと「走りながら考えればいい」みたいな風潮があるが、むしろ新たに始める事業だからこそ、小さい事業だからこそ個々人の役割の重要度は増す。「走りだす前に組織をつくる」は新規事業の鉄則といえるだろう。

皮肉な話だが、新規事業が失敗しやすい原因は冒頭に掲げた2つの経験則とも関連する。今ある事業やリソースの「延長」「応用」「活用」といったある種〝お手軽な響き〟が、新たに事業を興すというよりは「通常業務の延長」といった錯覚を引き起こし、よく知ったメンバーだから「人を集めれば何とかなる」と思わせてしまう。
こうした誤解は新規事業のため集められたメンバーのみならず、往々にして新規事業を命じる経営陣も持ち合わせているため、なかなか問題に気づきにくいので注意したい。

ところで、中小企業が新規事業をはじめるにはどのような点に注意すればいいのだろうか。次回は新規事業に相応しい組織づくりの話を。

◆Yahoo!ニュースなど多くのメディアに転載された2018年以前のブログは↓

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