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新規事業に必要な人材は反逆者、暇人、そして頑固者

どういうわけか昔から新規事業に縁がある。事業立ち上げの経営相談に乗ったり、スタートから1年ほど経過した事業の立て直しに携わったり、ローンチ間近の案件にリサーチャーとして参画したり、ついには自ら農業ベンチャーを興した経験もある。うまくいったケースもあれば失敗したケースもあり、そもそも事業化に至らなかったケースもある。

さて、前回は「新規事業が失敗しやすい2つの理由」を述べたが、今回はその続きとして成功に近づくための話を少々。それが組織づくりだ。

新規事業=チャレンジとばかりに社内のエース級人材を集めれば成功するわけではない。またオーソドックスなピラミッド型組織が必ずしも万能というわけでもない。強いていえば下記のようなシンプルな発想に基づく組織がいい。

必要な業務に、必要な人材を充てる――。

商品を売るから「営業」、財務を任せる「経理」、ネット関連の「IT」――。最初はそんなユルい組織、アバウトな体制で構わないだろう。というのもフタを開けてみないとどんな業務が必要なのか分からないのが新規事業だからだ。とはいえ、立ち上げ段階から絶対に欠かせない人材が3つある。反逆者、暇人、そして頑固者だ。

1)「ベテラン反逆者」が組織を活性化させる

新規事業を始める際に陥りがちなワナが1つある。それは賛同者のみでメンバーを固めてしまうことだ。「この事業は絶対に成功するはず!」「みんなで頑張ろう!」など意気揚々と始めるのはいいが、メンバー全員が前向きであればあるほど意見は同質化しやすく、合理的な判断を妨げてしまうことも。そんなときに必要なのが反対意見、冷静な視点だ。

「そんな売り方じゃ誰も振り向いてくれないと思うよ」
「商品はともかく社員教育が全然ダメダメでしょ?」
「だから値段が高いって。私ならまず買いませんね」

メンバーからすれば目ざわりで厄介な存在かもしれないが、反逆者の意見は的を射ていることも少なくない。そんな意見の1つひとつに対応していくことで事業の精度は高まり、組織も強くなる。
会社の状況にもよるが、新規事業に関わっていない社員からすると〝触らぬ神に祟りなし〟といった風潮もあり、事業に対する反対意見や批評があってもあえて口にしない人は多い。つまり〝身内に敵を招き入れる〟ことで組織を活性化しつつ合理性を保つのだ。

ちなみに反逆者は若い世代では務まらないだろう。やはりさまざまなビジネス経験を積んだベテラン社員が望ましい。

2)「優秀な暇人」を野放しにする

営業もできるし商品にも詳しく、コミュニケーション能力も高い――。どこの企業にもそんな社員がいると思うが、新規事業にはこうしたオールマイティーな人材が1人は欲しい。必要な業務に、必要な人材を――。最初こそユルい組織で構わないが、事業を進めていくうちに必ず予想外の業務、隠れた課題などが次々と現れるもので、そんなとき「とりあえずこんな感じでやりましょう」とこなせる人材は貴重だ。

サッカーには「リベロ」というポジションがある。イタリア語で「自由」という意味で、ほかの選手と異なり特にマークすべき選手はおらず一見すると暇人のようだが、危険が迫ればいち早く察知してゴールを死守し、かと思えばFWを追い越して点まで取ってしまう。まさしく自由な存在だが、優秀なリベロを抱えるチームほどしぶとく、そして強い。

新規事業においてもこんな「優秀な暇人」を置いておきたいものだ。組織がグッと引き締まり機動力が高まるだけでなく、ピンチにもチャンスにも強くなる。ほかのメンバーの業務量を100とするならリベロの業務量は50くらいに抑え、何でも好きなようにさせるとうまくいくことが多い。

3)リーダーと対決できる「頑固者マーケッター」

「ターゲットが想定とズレていたかもしれない」「ちっとも売上げが伸びない」「商品の良さが伝わらない」など、新規事業に紆余曲折はつきものだ。あまりに停滞が長引くと、どうしてもメンバーの間に「新規事業のコンセプトは正しいのか?」といった不安や疑いが過るのはやむをえない。ただし、そこですべきは営業戦略を見直したり販促企画に工夫を凝らしたり。すなわち「マーケティング戦術の変更」によって対処することであり、決して「事業コンセプトの変更」をしてはならない。

事業コンセプトとは、メンバーにおいてはただ1つの「行動規範」であり、社内的には事業の正当性を主張する「存在証明」であり、また取引先や消費者にとっては「企業姿勢」そのものに映る。いわば憲法であり、よほどのことがない限り軽々に変えるべきではない。

あまりに新規事業がうまくいかないと事業リーダーや経営者は「コンセプトを変えてみようか…」と言い出すかもしれない。メンバーも同意するかもしない。しかし採算があるのなら、これにきちっとしたマーケティング戦略&戦術を示して反対すべき。それが正しいマーケッターの役割だ。あっさりコンセプトを変えるような人材ならマーケティングの能力不足だし、コンセプトが何度もコロコロ変わるようなら、そもそも新規事業として未熟ということだ。

人材を動かす究極セミナー「名刺マインドマップ」

「やはりITは〇〇に任せるべきだろう」「〇〇の営業スタイルは社内でも評判いいなあ」「〇〇はムードメーカーだからぜひ欲しい」――。

新しく組織をつくるとき、リーダーは天井を見上げながら、あるいはオフィスを見回しながらこんな風に考えるものだろう。ただ、頭のなかでのシミュレーションはどうしても「身近にいる者」「よく知った者」「気に入った者」に偏りやすく、社内にいる人材を公平かつ幅広く精査するのは難しい。そこでオススメしたいのが『名刺マインドマップ』というアイデア発想術。手持ちの名刺をカードゲームのように動かしながら組織をつくり、アイデアを創造していく。要は〝人材を可視化する〟わけだ。

名刺イラスト3.jpg

(イラスト出典:「名刺は99枚しか残さない」メディアファクトリー新書)

「名刺マインドマップ」のポイントは、
1)「名刺=実在する人物」を使うため極めて実現可能性が高いアイデアが生まれる
2)「名刺=実在する人物」を動かすことで想像以上にリアルなマネジメント体験となる
3)名刺をじっくり見つめ直すことで「人材の再発見」「人脈の掘り起こし」につながる

詳しくは→「アイデア発想セミナー」 ~名刺を使いゲーム感覚で企画力を鍛える~

この発想術の面白いところは、同じ名刺を持っていても同じ職場で働いていても、人によってまったく異なる組織、異なるアイデアが生まれることで、以下のような企業にオススメだ。

◇「マネジメントを学ぶ」「企画力を鍛える」など20代向け研修
◇「新規事業の発案」「プロジェクト発足」など30代リーダー向けワークショップ
◇「人事異動」「事業の再構築」など40代幹部向けアイデア支援ツール
◇小売業・サービス業の「新店オープン」、「起業準備」など。

どんなに入念に準備をしても何が起きるか分からないのが新規事業の面白いところだ。ボクは農業ビジネスで一度チャレンジしているが、すっかり成熟したように見えるマーケットでもマーケティング次第ではチャンスが転がっている。多くの新規事業が生まれればいいな、と思う。

◆Yahoo!ニュースなど多くのメディアに転載された2018年以前のブログは↓

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