昔から、結構なamazonのヘビーユーザーである。書籍はもちろん、雑貨や食品やペットフードなど、相当な額の消費をamazonに委ねている。こうなると、たぶん現代の多くの人がそうであるように、買い物の傾向や閲覧履歴などから、ほぼ毎日のように「amazonのおすすめ」メールが届く。
ただ、はっきり言って、ほとんど意味をなさないメールばかりである。買ったばかりの商品をすすめてきたり、類似商品をすすめてきたり、ほぼ開封せずに消去している。
それは単なる迷惑メールくらいのつもりであり、消去するのは苦でもない。また、amazonもいろいろ工夫しているのだな、くらいのつもりでいた。
ところが、いつの頃からか、「amazonのおすすめ」が相当にタチが悪くなったというか、「そのシステム、本当に大丈夫か?」と不安に覚えるくらいに、レベルが落ちた。AIの技術は進化しているはずであり、その最先端にいるはずの企業とは思えないメールがひっきりなしに届くようになった。
例えば、小泉今日子のベストアルバムを購入した。キョンキョンのファンだからだ。しかし、それ以降、やたらと80年代アイドルのレコメンドが続くようになった。中山美穂のベストCDは要りませんか? 中森明菜のベスト盤はどうですか?
普通に考えれば分かることだが、あくまでキョンキョンのファンであって、すべての80年代のアイドルに興味があるはずもない。挙句の果てには、まったく売れなかった無名の80年代アイドルのCDまで売りつけてくる始末。
ここまでならまだ笑い話で済むが、amazonもいよいよ末期と感じたのは、4月頃になって「今年のイヌのカレンダー、要りませんか?」というおすすめメールだ。毎年、決まったイヌのカレンダーを購入しており、それを元にしているらしい。
しかし、4月って…どういうつもりなのだろうか?
1月ならまだしも、4カ月も過ぎて今年のカレンダーを売り込むなんて、食べかけのケーキを売りつけるに等しい。
的外れのアイドルCDにしても、在庫処分のカレンダーにしても、そこまでは許容範囲だった。しかし、先日、「マジでいい加減にしろよ!」というおすすめメールが届いた。
「ペットの棺、安らぎダンボール」という商品案内である。亡くなったイヌを安置させるための特殊な商品だ。
じつはつい先日、我が家のイヌが急逝した。16歳半の大往生であり、間違いなく家族以上の家族である。ただ、不運なことに、奥さんは1週間の海外出張に出ており、「イヌとの最後のお別れ」をさせずに火葬するわけにはいかなかった。イヌも、奥さんも、一目会いたいはず。
そこで、何とか1週間、イヌの遺体を腐敗せずに保てるものはないかとamazonで検索して見つけたのが、「ペットの棺、安らぎダンボール」だった。幸い、商品は優れていた。無事に1週間きれいな状態を保つことができ、出張から帰ってきた奥さんと共に、安心して葬儀を行うことができた。
とはいえ、ボクも奥さんも悲しみは深すぎるほど深く、まだ亡くなったばかりであり、気づくと涙がこぼれ落ちている毎日を過ごしている。
そんなところに届いた「amazonのおすすめ」が、まさかの再びの「ペットの棺」である。言うなれば、「葬儀の催促」であり、「死亡の押し売り」である。我が家には、まだ2匹のイヌがいるのだ。もちろん、amazonは知るはずもないが。
高度なAIによる自動的なメールにせよ何とも非常識であり、そんな失態に気づかないなんて、何とも虚しい企業である。
驕れる者久しからず――。
どんなに強い企業でも、必ずや滅びる宿命にある。amazonのマーケティングって、じつはこの程度なのかもしない。
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