就活ルールが廃止されることになった。企業のマーケティングを立て直すコンサルティングを手がけるボクには関係ない話だが、「ふーん、そうなんだ…」と小さな驚きと感慨を持ってそのニュースを受け止めた。
というのも数年前、就活に関するビジネス本を出版しているからだ。タイトルは「就職は3秒で決まる。」――。就活生のみならず、大学1年生さらには中高生に向けて「いかに面接に挑むか」「いかに学生生活を送るべきか」を提案した。ネットでも話題になったせいか、今でもたまに「あの本、読みましたよ」という若手ビジネスマンに出会うこともあり、少々気恥ずかしい思いをすることもある。
さて、就活ルールの廃止という問題。これによっていったい何が変わるのか――。すでにいろんな意見が出ているようだが、こればかりは実際のところはフタを開けてみなければ分からないだろ。
ただ、就活生が注目すべきポイントは2つある。
1)不必要にアタフタしない
しょせんルールが廃止されるだけである。コトの本質、つまり〝就職試験を受ける〟という中身そのものが変わるワケではない。テストを受けて面接を通過する――。面接官から聞かれたことに素直に答えればいいだけだ。自分以上のモノは出せないのだから、何も恐れる必要はない。
むしろ問題は「環境の変化」にある。就活ルールの廃止は、これから様々な噂や憶測を生み出すだろう。あるいはオカシな対処法がまことしやかに就活生の間に広まるかもしれないし、メディアもいろんなことを言うはずだ。だからといって、そんなことにイチイチ反応していたら気が休まらないし、何より肝心の面接によろしくない。
ビジネスで要求される能力の1つに「アタフタしない対応力」が挙げられる。納期遅れだったり取引先の意趣返しだったり、理不尽な要求だったり、予期せぬトラブルはつきものだ。それらをいかに乗り越えるかでビジネスマンとしての評価や価値は決まる。
就活ルールの廃止でアタフタするような就活生は、そうした心理や態度も面接で現れてしまう。
「就活ルールの廃止が、どうかしたの?」
これくらいの気持ちで、ドンと構えるのが大切だ。
2)とにかく企業を回る
人手不足、売り手市場、急速な技術の進化――。とにかく優秀な人材を確保したいというのが現在の企業の実情だ。このため、なるべく多くの就活生に会い、さらには自社のことを深く知ってもらいたいと考えており、この傾向は今後ますます強まるだろう。逆に考えれば、就活生は多くの企業と知り合えるチャンスが増える。
人間と同じように、企業も実際に会ってみないと分からないものだ。意外な企業が意外な事業を手がけていることも結構ある。企業研究に時間や労力を割くよりも、なるべく多くの企業を回り、根掘り葉掘り話を聞いた方がよほどメリットは大きく、自らのチャンスを広げる。
実社会に出ればそう簡単に企業の担当者と会えるワケではない。あくまで就活生という〝特殊な立場〟だから自由に気軽に合えるだけだ。ぜひそのチャンスを楽しんで欲しい。
ところで、今、就活生にオススメしたい「狙い目の企業」にはどんなものがあるだろうか――。ボクが就活本を出版した数年前と比べると、2つの企業によりチャンスが潜んでいると思う。
1つはITを駆使した「サービス系のスタートアップ企業」。IT企業でなく、あくまでサービス業という観点においてアイデアに優れた企業がここ数年で急増している。ビジネスのスピードは速く、時代を切り拓く感覚は今ならではの醍醐味であり、若者には学びの多い環境となるだろう。
そしてもう1つは真逆のパターン。「後継者不足に悩む老舗の中小企業」である。
数年前も中小企業の事業継承は密かな問題となっていたが、現在いよいよ差し迫ったものとなってきている。黒字なのに倒産。優れた商品があるのに販売先が消えた――。我々の知らないところで、優秀な中小企業が日本から消えつつある。
ちょっと考えてみたい。
こうした伝統的な中小企業ほど「ヒト・モノ・カネ」の3要素が最初から備わっているものだ。30年企業なら30年ぶんの、50年企業なら50年ぶんの信頼やネットワークをすでに有している。簡単にいえば、後継者のアテがないだけ。必要なのは新しいアイデアだ。
これって、就活生にとってはむしろチャンスじゃない? もし今、ボクが就活生だったら、間違いなく後継者不足に悩む老舗の中小企業を狙う。大企業のなかで埋もれることもないだろうし、スタートアップ企業ほど不安定でもない。もちろん困難は多いだろうが、それが後々の生きた体験にもなるだろう。
中小企業に経営者候補として入社する――。一見不利なようにみえて、じつは人生をショートカットする合理的選択ではないだろうか。
◆Yahoo!ニュースなど多くのメディアに転載された2018年以前のブログは↓
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